【ネタバレあり】漫画「凪のお暇」9巻の批評と感想。

2021年12月16日に「凪のお暇」の最新刊である9巻が発売されました!

今回は9巻のネタバレありの批評と感想をしていきたいと思います。

さて、9巻は風来坊のようなゴンが凪にプロポーズするところから始まります。

今まで女性にだらしない姿を見ているので、凪と同様に不安になりました(笑)

でもこの人なら幸せにしてくれるかな…と思えてしまうところがやはり魔性か…。

ゴンはそっと日々に刺激を与えてくれる凪を。
凪は自分を肯定し、穏やかに寄り添ってくれるゴンを。

互いがこれまでの人生で必要としていた存在でした。

理想の生活にだけ目を向けるのならば、これ以上ない相手なのかもしれません。

慎二とは真逆のゴン。
どちらも極端な人物なので、慎二とゴンの中間くらいの人が現れないかなっていつも思います(笑)

そしてお話は凪の母・夕へ。

夕は凪にモラハラを繰り返すいわゆる毒親でしたが、実は彼女も母親に苦しめられていた一人でした。

血は争えず、時代は繰り返すものなのかと苦しくなりましたね…。

しかし、さまざまな人と出会っていろいろな考え方を知ることで抗うことはできます。
まさに今の凪のように。

今までその機会さえなく、ただ娘に固執していた夕にはこれから広い世界を知ってほしい、そして豊かな感情を手に入れてほしいです。

また、夕が母親に言った「選択肢が増えるのが怖いだけでしょ」という言葉ですが、とても考えさせられました。

人生に選択肢があるのは素晴らしいことですが、それに手を伸ばせないならただ苦しいだけ、辛いだけです。
自分にはできないことをしてる自由に(見える)人に嫉妬する…。
SNSなどでもよくあることですし、自分にも心当たりがあるので染みましたね…。

また、凪の母もおばあさんも悪い男に惹かれる性質なのでしょうか…、相手がみんなゴンに似ているんですよね(笑)
これは凪の代で断ち切るというか、人は変われるとこの作品が教えてくれるならば、ゴンと凪は一緒にはならないと思うんですよね。

次に慎二ですが、彼も家族に生き方を歪められており…。
みんなどこかしら家族の問題を抱えていますが家族って一番近い存在ですし、一生つきまとう根が深い問題だと思います。

反面教師にするか、それともそのまま親に従い生きていくか…。
慎二は正しいはずの前者を選んだのにどこか息苦しそうで。
そういう風に生きていくしかなかったのだと思うと苦しくなりました。

凪と慎二が恋人だった頃より、今のなんでも言い合える友達のような関係が凄く好きです。

かつての慎二は凪を想うあまり執着し、支配しようとしていました。
それで自分の心は一時的に満たされるかもしれませんが、相手はすり減っていくだけ。
とても虚しい行為です。

たしかな未来もなんの約束も今の二人にはありませんが、執着も束縛も憎み合うこともない関係は純粋に素敵だと思いました。

執着する相手から距離をとり、視野を広くすることはとても大事ですね。

慎二は凪と離れ、同じ会社の後輩である円と歯車が合い、いい雰囲気に。

彼女は顔も性格も慎二のドストライク!
このままゴールインか…?
と喜びそうになりましたが、そこは凪のお暇。
そう上手くはいきません。

慎二は円をどこかで下に見ており、歯車も自分が回していると思っていたのでしょう。

しかし、彼女は予想外に仕事ができる人間でした。
それは彼の立場を脅かすほどに。

今まで凪に辛く当たっていた慎二。
その罰が今度は違う形で彼に返ってきたのかもしれません。

まだ円の真意は定かではありませんが、正直人間の側面を見た気がしてゾッとしてしまいました。
人間は複雑な生き物だと改めて知った気分です。

人生の岐路に立たされた慎二。

与えられた試練をどう乗り越えるのか?

凪だけでなく、彼のこれからについてもすごく気になるところです…!

また、サッカー部でいじめられていた勝くん。
すごく良い子でした。

一瞬危うさも感じましたが、凪のおかげで衝動に流されずに大切なことに気付くことができた。

もしこれが自分だったらひたすらに悪い方へ向かっていたと思います。

この漫画を読んで、いじめられた側の溜まった感情はどこに吐き出せばいいのかと悩みました。
しかし、そういう時こそ自身を覆い尽くす負の感情にゆっくりと寄り添い、見つめることが大事なのではと思いました。

そして追いつめられて闇に飲み込まれてしまう時こそ、凪や勝くんのようにささやかな優しさに目を向けてみようと。

本作に出てくる大人は子供のように悩み、苦しむ。

それはもちろんリアルでも一緒で、休むことは悪いことでも恥ずかしいことでもないのだと教えてくれます。

また、この世界は残酷ながらも温かく優しいということも。

親や社会、人間のあふれる “欲”とどう向き合い、付き合っていくか。

なにを選び、どう生きていくかはすべて自分次第。

変わりたいと思う限り、いつからでもやり直せると自分は信じたいです。

「凪のお暇」はシンプルながら非常に考えさせられる作品で、読んでいる間は凪たちと一緒に自分を見つめなおすことができます。

次の10巻では彼女たちはどういった道を歩んでいるでしょうか。

どうかより良い未来が待っていることを祈ります…!