【ネタバレあり】映画「レオン」の批評と感想。

孤高の殺し屋レオン、そして、ある事件によって家族を殺された12歳の少女マチルダ。
この二人が出会い、一緒に暮らしていく中で、特別な感情を抱いていく様子を切なくも温かく描いている作品、映画『レオン』。

映画『レオン』は1994年公開の作品で、今から25年以上も前に作られた作品となっています。
けれど、世界中で不朽の名作と称されているように、今でも多くの人たちに愛され続けています。
著者もその中の一人でして、今でも定期的に鑑賞しています。
そして、何度も鑑賞しては、そのたびに初めて鑑賞した時と同じくらいに感動していて、いくら鑑賞しても全く飽きない作品となっています。

この作品を鑑賞したことがない方でも、レオンという映画のタイトルなら知っているという方はかなり多いのではないでしょうか。
それほど有名な作品となっています。

ここでは、そんな映画『レオン』について、個人的な感想や批評などを書いていきたいと思います。

はじめに、映画『レオン』の内容について、簡単に紹介しましょう。

ニューヨークのアパートで家族と一緒に暮らしていた12歳の少女マチルダ。
ある日、表向きは麻薬捜査官だが裏社会で麻薬取引を支配する汚職警官のスタンフィールド(スタン)によって、父、まま母、姉、そしてマチルダが唯一愛していた家族だった弟までも殺されてしまいます。
その時、運よく外出していて助かったマチルダは、隣の部屋に住むレオンに助けてもらうのでした。

そして、レオンがプロの殺し屋だと知ったマチルダは、最愛の弟の敵を撃つため、自分を殺し屋にしてほしいとレオンに頼みます。
マチルダの説得で嫌々ながらも彼女の頼みを受け入れたレオン。
こうして、二人の生活が始まり、一緒に過ごしていく中で、レオンとマチルダの間には特別な絆が育まれていきます。
そんな折、スタンの魔の手が忍び寄り、二人の生活に終止符が打たれるのでした。

この作品の感想を簡潔に表すと、「すごく好き!」です。

オリジナル版と完全版とで印象に違いなどもありますが、それらを含めても著者の感想としては、とても満足できる作品だと言えます。

それでは、具体的に著者のイチ押しポイントを中心に話していきたいと思います。

この映画について語る上で、まず注目したいのは、監督のリュック・ベッソンです。
映画『レオン』はフランスの映画監督であるリュック・ベッソン監督のもとで作られたフランスとアメリカの合作映画であり、ベッソン監督のハリウッドデビュー作となっています。

ベッソン監督といえば、戦う女性、強いヒロインを魅力的に描く作風が特徴的です。
1990年に公開された『ニキータ』や1999年公開の『ジャンヌ・ダルク』が代表的な作品でしょう。
この作風は『レオン』のマチルダにも生き生きと発揮されています。

また、もう一つ忘れてはならないベッソン監督の特徴は、なんと言ってもハードボイルドアクションでしょう。
自身の監督作のほかに脚本や製作で関わった『TAXi』シリーズや『トランスポーター』シリーズでも、ベッソン監督が得意とするアクションが作品をより一層魅力的なものにしています。

物語の切ない展開とベッソン流アクションが見事に組み合わさった『レオン』は、他の監督だとここまで完成度の高い作品にできなかったと思います。

そして、『レオン』の魅力の一つとして欠かせないのが、なんと言ってもキャスト陣です。

映画『レオン』は比較的、登場人物が少ない作品となっています。
そんな数少ないキャラクターたちが、それぞれに観客を惹きつける個性を持っているのです。

ゲイリー・オールドマン演じるスタンなんて、登場シーンはとても少ないのに、一つ一つの動作、いや、ただ立っている姿だけで、圧倒的な存在感、そして狂気を出しています。
ゲイリー・オールドマンの怪演は本当に恐ろしいものです。
スタンの初登場シーンは、イヤホンで音楽を聞いている後ろ姿なのですが、それだけで、クレイジーで怖い印象を観客に与えます。

ゲイリー・オールドマンって誰だろう、って思う方でも、『ハリー・ポッター』シリーズのシリウス・ブラックを演じていると言えば、パッとイメージできる方もいるのではないでしょうか。

一方、プロの殺し屋レオンを演じるのは、ジャン・レノ。
実は、ジャン・レノは『レオン』以前にも『ニキータ』でベッソン作品に出演しています。
その時の役は暗殺の遺体を後始末する掃除人の役で、ベッソン監督はそれをもとに『レオン』のストーリーを生み出したという小話もあります。

また、家族を失った孤独な少女マチルダを演じるのは、ナタリー・ポートマンです。
この作品は彼女のデビュー作となりましたが、鮮烈な登場だったと言えるほど、『レオン』での彼女の演技は凄まじいものです。
レオンとものまねゲームをして遊ぶシーンでは、マドンナやマリリン・モンローのまねをしてお茶目で可愛い姿を見せる一方で、シリアスな場面では大人っぽく見え、さらには色気さえ感じられる瞬間まであるのです。
キャスティング当時はほんの11歳だったと知って、著者は今でも驚きを隠せないです。

もう一人、レストラン店主でレオンに仕事を紹介している人物であるトニーもいい味を出しています。そのトニーですが、いい人なのか悪党なのか、著者は未だに分かりません。
というのも、レオンのお金を使い込んでいるのか、それともきちんと保管しているのか気になるんです。
だって、レオンに言った話をそっくりそのままマチルダにも言ってて、うーん、どっちとも取れるような・・・。
『レオン』を鑑賞した人たちにご意見を伺ってみたいです笑。

次に、映画をより盛り上げてくれる音楽に注目してみましょう。

ベッソン監督の作品といえば、エリック・セラの音楽と言えるほど、エリック・セラは多くのベッソン作品の音楽を手掛けていて、『レオン』でもセラの曲が使われています。

また、映画のエンディングで流れるスティングの名曲「シェイプ・オブ・マイ・ハート」。
物語とのコンビネーションがとても素晴らしいです。
最後のシーンで、マチルダが地面に観葉植物を植えている時にこの曲のイントロが流れてくるだけで、一気に心臓が締め付けられます。

さて、この『レオン』なんですが、実は、オリジナル版と完全版の二つが存在します。
完全版には、オリジナル版に収録できなかった22分間のシーンが加えられています。
22分間のシーンには、マチルダが殺し屋の訓練をする部分、マチルダの初仕事を祝う食事の場でシャンパンを飲むシーン、そして、マチルダがレオンに初体験をしたいと告白するシーンが含まれています。

正直、著者は、オリジナル版と完全版で全く違う印象を受けました。
オリジナル版では恋愛とは違う二人の絆が描かれていましたが、未公開シーンを見ると恋愛なのかもしれないとも思ったのです。
完全版のほうが、レオンとマチルダの心情を読み取れますが、鑑賞する人によって意見が分かれる要素だと思います。

映画『レオン』はアクションでもあり、ラブストーリーでもあり、ヒューマンドラマの要素もあって、映画のジャンルとして一つに絞れないです。
そして、監督がリュック・ベッソンであり、キャスト陣がジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、そしてゲイリー・オールドマンであったからこそ、『レオン』は成功したのではないかと思えるほど、この作品は監督や俳優陣の存在が大きいものだと思います。
また、『レオン』と合わせておすすめしたい作品が、1980年公開の『グロリア』です。
『レオン』の原型とも言われていますが、『レオン』が好きな方なら楽しめる作品だと思います。

ここで著者が書いてきた内容を頭の隅にでも置いていただきながら、映画『レオン』を鑑賞してもらえると嬉しいです。
著者も、この記事を書きながら、また鑑賞したくなってきました。