2013年に公開され、多くの人の感動を呼んだ「言の葉の庭」。
どんな物語なのか知っていますか。
「言の葉の庭」に対して地味な印象を抱いている人も少なくなく、まだ観ていない人をちらほらと見かけます。
まだ観ていないのは、もったいない。
「言の葉の庭」は、さまざまな魅力を持った作品です。
「言の葉の庭」の魅力について、詳しく知っていきましょう。
「言の葉の庭」のあらすじ
現代の東京。
靴職人を目指す秋月孝雄(あきづきたかお)は、立ち寄った新宿御苑で朝からビールを飲む雪野百香里(ゆきのゆかり)と出会う。
ビール+チョコレートという珍しい組み合わせを目にし、思わず百香里に注目する孝雄。
孝雄は百香里に会ったことがあるような、不思議な気持ちを感じる。
新宿御苑での出会いをきっかけに、孝雄と百香里は徐々に親しくなっていくのだった。
ある日、孝雄は学校で職員室から出てきた百香里と遭遇する。
実は百香里は孝雄が通う学校の教師であり、生徒による教師いじめが原因で心と身体のバランスを崩していたのだ。
百香里が抱えている事情を知ったことをきっかけに、より親密になっていく2人。
やがて2人の関係に変化の時が訪れる。
「言の葉の庭」のココが魅力!3選
1.梅雨を感じさせる映像美
「言の葉の庭」の大きな魅力と言えるのが、梅雨を感じさせるきめ細やかな雨の表現です。
孝雄と百香里のシーンでは、雨による演出が多く使われています。
「言の葉の庭」は梅雨の時期をテーマにした作品。
孝雄と百香里が新宿御苑で初めて会ったとき梅雨の時期に入っているため、雨の描写もどこか梅雨を感じさせるものとなっています。
さらっとした感じの雨ではなく、ジトーとした感じの雨です。
梅雨の嫌な感じを映像で表現できるとは、さすがは新海誠監督。
2.受け入れやすい世界観
「言の葉の庭」では、超自然的な現象が起こったり特殊能力を持った人が現れたりすることはありません。
現実的な悩みやストレスを抱えた人たちが、自分と向き合っていく物語です。
そのためキャラクター同士の人間関係や心情に集中でき、物語をシンプルに楽しめます。
キャラクターと同じような悩みを抱えている人が近くにいるかもしれない、そんな気持ちを抱かせる素敵な作品です。
街並みも細かく表現されているため、実際に自分が作品の中に入り込んだような臨場感を感じさせます。
3.リアルなキャラクター
「言の葉の庭」に登場するキャラクターは、とってもリアル。
主要キャラクターである孝雄と百香里はもちろん、サブキャラクターもどこかにいそうな雰囲気を漂わせます。
孝雄と百香里が抱えているのは、誰もが1度は経験またはこれから経験するかもしれない悩み。
孝雄と百香里に思わず共感してしまう人も、少なくないと思います。
百香里への教師いじめを主導した女子生徒の感じも、「ああ~こんな人いるいる」と思わず納得してしまう見た目やしゃべり方をしています。
クラス全員で百香里に嫌がらせをするよう主導したり、親にでたらめを言ったりとひどい教師いじめを行います。
自分が付き合っている人が百香里を好きになって悔しいからと言って、許されることではありません。
教師いじめを主導した女子生徒の様子を見ると、女王としてクラスを牛耳っていることがうかがえます。
自分の影響力を利用して、クラス全員で百香里に嫌がらせをするよう指示を出したのかもしれません。
「言の葉の庭」はこんな人におすすめの作品
非現実的な物語が苦手な人
非現実的な物語を見ていると、ついツッコミたくなってしまうことがありませんか。
物語だと分かっていても、「そんな特殊能力あるはずがない」「こんな世界はありえない」と考えてしまう人が実は少なくないんです。
「言の葉の庭」は、「いやいやそんなことあるわけないだろ」と考えてしまう現実的な人におすすめの作品。
リアルな悩みや性格を持った人々が登場する作品なので、心を落ち着けて視聴できます。
考察するのが好きな人
「言の葉の庭」では、孝雄と百香里の関係がどうなったのか具体的に示されていません。
2人は完全に離れてしまったのかもしれませんし、遠距離恋愛をしている可能性もあります。
または孝雄が成人してから話し合おうといった、約束をしている可能性も。
アニメの良さって、視聴する人によってさまざまな考察が生まれる点だと思います。
あの2人はこうなったのかもしれない、そんな考察をしたい人に「言の葉の庭」はおすすめの作品です。
「言の葉の庭」に登場する主なキャラクター
秋月孝雄
東京の高校に通う15歳の少年。
幼い頃、母親に靴をプレゼントしたことをきっかけに靴職人を目指します。
靴職人になりたいという強い気持ちを持っているものの、夢と現実の狭間で悩む日々を送っています。
- 靴の専門学校に通うのにかかる学費が心配
- 必ず靴職人になれるとは限らない
- 自分の夢が現実を見ていない、子供じみたものに感じられる。
- 人とは違う道を進む孤独感
など、さまざまな悩みを抱えていることがうかがえます。
シングルマザーの家庭のため、母親に迷惑をかけたくないといった気持ちもあるでしょう。
孝雄は多くの悩みを抱える日々の中で、新宿御苑で過ごす時間に救いを求めたのかもしれません。
雪野百香里
孝雄が通う学校で教師をしている27歳の女性。
教師いじめによって心と身体を壊し、学校に行けない日々を送っています。
物語の当初、百香里はアルコールとチョコレートの味しか感じられていない状態でした。
孝雄との交流によって心と身体が回復し、ほかの食べ物の味を感じられるようになっていく様子は感動ものです。
同じ学校の教師と交際していた過去があります。
百香里が元交際相手と電話で話しているシーンをよく見ると、元交際相手の家のカーテン越しに女性の影が見えます。
そのため当時ファンの間で「百香里先生は過去、元交際相手と不倫の関係にあったのでは?」という疑惑が持ち上がりました。
百香里と別れた後に交際をスタートさせた彼女とも言われていますが、実際はどうなんでしょうか。
百香里「周りの声ばかりを聞いていて、私のことは信じてくれなかった」
百香里の心の声から察するに、交際当時の彼は百香里を積極的に助けなかった様子がうかがえます。
百香里が不倫相手だから疎ましく思っていたと考えると、納得がいく部分もありますね。
そのほかのキャラクター
孝雄の兄や母親・友人たち・教師いじめを主導した女子生徒など、さまざまなサブキャラクターが登場。
個人的には孝雄の家族事情をもっと強調したら、より物語の深みが増したのではないかと思っています。
ただ「言の葉の庭」は孝雄と百香里の関係を主体とした物語なので、あえてサブキャラクターを派手に演出しない方向性にしたのかもしれません。
「言の葉の庭」は孤独感を抱えた2人の物語
「言の葉の庭」を観ていると感じるのが、孝雄と百香里が抱えている孤独感です。
百香里は教師いじめによって心に傷を抱え、一般的な社会生活を送れない状態に。
孝雄は夢と現実の狭間で、将来への不安や努力が無駄になるかもしれない恐怖を感じていたと思います。
実際に物語のラストシーンで孝雄は百香里に対して、最初から教師だと知っていたら夢を語らなかったと告げています。
理由は自分の夢を否定されるのが怖かったから。
夢を叶えるために努力しつつも、「本当に自分が進もうとしている道が正しいのか」といったもやもやした気持ちを抱えていたのではないでしょうか。
「言の葉の庭」は、実際に作品を観てみないと分からない空気感を持った作品です。
ぜひ視聴してみてください。