2022年6月17日に発売された漫画『ここは今から倫理です。』7巻。
本作は「倫理」の授業を通して人間の本質や葛藤を考えさせてくれる作品です。
話は基本的にオムニバス形式で進行しますが、今回は前巻からの続きとなっている点も多く見どころ満載。
この記事ではそんな『ここは今から倫理です。』7巻の見どころや感想をネタバレ込みでお伝えします。
『ここは今から倫理です。』7巻の内容と見どころ
『ここは今から倫理です。』7巻で特に印象的だったエピソードから、見どころをお伝えします。
感性を大切にする「誰もいない教室」
『ここは今から倫理です。』7巻は、修学旅行に行かない田岡くんのエピソード「誰もいない教室」で幕を開けます。
旅行当日にバックレるというダイナミックな方法で、修学旅行への参加を拒否した田岡くん。
周囲の大人たちは田岡くんを心配したり怒ったりしますが、本人はどこか飄々としていて修学旅行不参加の理由をひた隠します。
田岡くんは皆が修学旅行に行っている間、学校で1人補講を受けることになりますが、そんな田岡くんのもとへ高柳先生がやってきました。
哲学者・ミルの言葉を使って、自分の感性を大切にする決断をした田岡くんを尊重する高柳先生。
大人になると無条件にルールに従いがちで、ルールからはみ出た者を異端者扱いする人が多いなか、高柳先生のような大人は田岡くんの救いになったのではないでしょうか。
そこで田岡くんは、修学旅行に行かない本当の理由を、こっそり高柳先生に打ち明けます。
田岡くんは、好きなヘヴィメタルバンドのライブが旅行日と被ってしまい、どうしてもライブに行きたいから強硬手段を使って修学旅行を欠席したのでした。
田岡くんが愛してやまないヘヴィメタルを興味本位で聴いて、ものすごい顔になる高柳先生。
高柳先生は口数さえ多くないものの意外と表情豊かですよね。
その後、自分の感性を守り抜いたことで無事にライブに参加できた田岡くんは、夢のように素敵な時間を過ごします。
「大多数が選ぶ道が、必ずしも自分の幸せとは限らない」ということを教えてくれた回でした。
最後の授業「もう少しだけ」「いい世界」
「もう少しだけ」と「いい世界」は、高柳先生が今受け持っている2年生に行う、最後の授業の話です。
実はこのエピソードの2つ前の話「先生はあたしのことが…」で、高柳先生は次の春に異動することが明かされています。
倫理の授業、最後のテーマは「何故人を殺してはいけないか」。
前巻のエピソード「なんで殺しちゃいけないの」で交わした鳥岡くんとの約束を、高柳先生はしっかり覚えていたんですね。
生徒たちにテーマを与えた高柳先生は、できるだけ口を挟まず生徒たちだけで対話させようとします。
人を殺してはいけない理由は、法律で禁止されているから?家族が悲しむから?人口が減ると困るから?
生徒たちが熱心に議論を交わすうち、授業終了を告げるチャイムが鳴りますが、高柳先生は「もう少しだけ」とそのまま授業を続行しました。
「人を殺してはいけないことに明確な答えはなくても、人を殺せば大なり小なり罪悪感が生まれる」
「なら人を殺さず暮らせる世界のほうがいい世界である」
「そんないい世界に住みたいのなら、やはり人を殺してはいけない」というところに議論が着地したとき、授業終了の合図を出す高柳先生。
高柳先生は今日の授業を振り返り、対話を通じて生きた倫理があったこと、どうか今日の授業を忘れないでほしいことを伝え、2年生にとって最後の倫理の授業は終了となりました。
ディベート回は台詞量が多く、読みながら意味をかみ砕くのに時間がかかりますが、だからこそ読み応えがあり読後の余韻もひとしおです。
高柳先生の過去「先生と生徒」
『ここは今から倫理です。』4巻でも「高柳先生」になる前の大学生・高柳くんと恩師のエピソードがありましたが、今回の「先生と生徒」はその後日談です。
前回は2人で熱海旅行に出かけましたが、今回はゼミ生全員で日光へやってきました。
旅行を終えた帰り道、ふと恩師にこれから教師になることへの不安を漏らす高柳くん。
しかしその瞬間、恩師は「俺ぁその手に引っかからんぞ」「お前の甘える手口は嫌いだ」と言って高柳くんを正面から突っぱねます。
高柳くんは「はぁ!?」と逆上するそぶりを見せますが、自分が教師になっても恩師の前では教え子でいていいといわれると安心したような表情をするあたり、やはり少し甘えたかったのかもしれません。
高柳くんは高柳先生以上にナイーブかつ危うげで、恩師も言っていますが「心配な奴」ですね。
『ここは今から倫理です。』7巻の感想
最初に受け持った生徒が卒業した5巻以降、少し勢いが弱まったように感じていましたが、7巻では白熱したディベートや高柳先生の過去が明かされて以前同様の読み応えがありました。
次巻からは新しい赴任先でのエピソードが始まるはずなので、今後の展開も楽しみです。
高柳先生は相変わらずあまり教師らしくなく、人間としても「よくできている」とはいえない部分がありますが、だからこそリアリティがあり共感できます。
そんな高柳先生が今後どのような活躍を見せるのか、8巻以降も期待です。