【ネタバレあり】漫画「ここは今から倫理です。」6巻の批評と感想。

2021年6月18日に発売された漫画『ここは今から倫理です。』6巻。

本作は高校で倫理を受け持つ教師・高柳が、独自のスタイルで教え子の悩みや葛藤に寄り添うオムニバス形式の作品です。

この記事ではそんな『ここは今から倫理です。』6巻の見どころや感想をお伝えします。

ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。

『ここは今から倫理です。』6巻の内容と見どころ

『ここは今から倫理です。』6巻では4人の新しい生徒が登場し、それぞれ異なる問題を提起しました。

ここからは、4人の生徒のうち特に印象的だった3人のエピソードから、見どころをお伝えします。

ルッキズムを考える「きれいな人」

『ここは今から倫理です』6巻は、女性らしい格好を嫌う女子生徒・六本さんの「きれいな人」という話からスタートします。

「女性らしさ」を押し付けられることを嫌う六本さんは、スカートをはき、胸元リボンが必須である女子の制服を変えるため、高柳先生の薦めに従い学校中で署名を集めていました。

六本さんに署名を求められたクラスメイトの沖津くんは、署名には協力しながらも六本さんの容姿を見てどこかマイナスな印象を抱きます。

六本さんは全体的にガタイがよく美人なタイプではなかったため、沖津くんは「本当は、自分に似合わないからスカートをはきたくないのだろう」と考えたのです。

しかしある日、六本さんの信念に触れた沖津くんは、自分はルッキズム(容姿至上主義)に捕らわれていたから六本さんに悪い印象を持ったのだと気づきます。

人間は本能上、美しい容姿の他人に惹かれる生き物ですが、容姿だけで人を判断することは差別にも繋がり、私たちの日常に潜むルッキズムに切り込んでくる回でした。

誰も答えられない?「何で殺しちゃいけないの」

『ここは今から倫理です。』6巻の目玉ともいえるのが、不良の男子生徒・鳥岡くんの「何で殺しちゃいけないの」という話です。

「誰かを殺して自分も死ねたらそれが1番の理想」と考える鳥岡くんは、自身を“中二病なのだろう”と客観視できながらも、殺し合いのつもりでケンカをしてはいつも相手を半殺しにしてしまいます。

そんな鳥岡くんはある日の倫理の授業後、高柳先生に「何で人を殺しちゃいけないの」と質問しました。

高柳先生はそんな鳥岡くんを、何も言わず自分の知り合いカウンセラー・萱島さんの元へと連れていきます。

「ゲシュタルト療法」というカウンセリング方法で、初対面の鳥岡くんをいきなり質問攻めにする萱嶋さん。

最初は大激怒していた鳥岡くんですが、大人から「何でも話して」と言われると何も話せなくなる彼にとって萱嶋さんのカウンセリングは新鮮で、鳥岡くんは自分を変えるためカウンセリングに通うことを決意します。

最後まで明確な答えは明かされなかった「人を殺してはいけない理由」。

もはや究極の質問ともいえるこの問いに、誰もが納得する答えを出せる人はいないでしょう。

しかし高柳先生はこの難問を、卒業直前、最後の授業のテーマにしてもいいと言っていたので、いつか自分なりの答えを見つけた鳥岡くんの姿が見られるかもしれません。

三大欲求の一つと向き合う「恥ずかしい事」

思春期っぽさを感じるエピソードが、性欲の強い女子生徒・竹田さんの「恥ずかしい事」という話です。

楽しい学校生活を送りつつ、実は毎晩のようにやってくる自分の性欲に悩んでいた竹田さん。

性衝動に駆られると竹田さんはこっそりオナニーをして性欲を発散しますが、厳格な家庭で育てられたこともあり、自慰行為をする自分が汚い存在のように思えて仕方ありません。

自己肯定感まで下がってパンク寸前だったある日、武田さんは勇気を出して高柳先生に声をかけ「女の子が一人エッチすんのっておかしいですか!?」というストレート過ぎる質問をぶつけました。

最初は目を白黒させて驚いていた高柳先生も、彼女の悩みが真剣であることを理解すると哲学者ルソーの言葉を借りて性欲との向き合い方を説き、最終的には彼女を安心させます。

自身の性事情を聞かれてダメージを受けつつ真面目に回答する高柳先生が可愛く『ここは今から倫理です。』6巻のほっこり回といえるでしょう。

『ここは今から倫理です。』6巻の感想

勧善懲悪では語れない問題をテーマに、考えさせられるエピソードが多い『ここは今から倫理です。』。

6巻には他にも、体罰指導に悩む「期待と責任と…」という話が収録されていました。

あいかわらず高柳先生の周りには、一言では片付かない日常の難問ばかりが集まってきますが、時に偉人たちの言葉を引用しながら生徒たちにヒントを授ける先生は今回もかっこよかったです。

また鳥岡くんのエピソードでは、鳥岡くんを萱嶋さんに託した高柳先生が「自分は何もできなかった」と後悔している一面があり、繊細な人間性が覗きました。

ただ作品としては、作中の年度が切り替わった5巻以降は思想に絡んだエピソードが減り、少しパンチが弱くなった印象を受けます。

高柳先生及び生徒たちのキャラクターはいつも魅力的なので、『ここは今から倫理です。』7巻では以前のようなパンチのある話が再び読めることに期待です!

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