【ネタバレあり】漫画「HUNTER×HUNTER」36巻の批評と感想。

作者の冨樫義博による漫画「HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)」の連載は1998年から始まり、今年で23年目に入りました。

「HUNTER×HUNTER」といえばとにかく休載が多いことで知られていて、ツイッターでもたびたび「HUNTER×HUNTER連載開始」というワードがトレンドに入ったりと今でも多くのファンが連載開始を待ち望んでいます。

今回はそんな「HUNTER×HUNTER」の最新刊である2018年10月4日に発売された36巻について書いていきます。

36巻はデフォルメされた幻影旅団のメンバーが表紙となっていて、もうすでにここから不穏な空気が漂っています。
デフォルメされたキャラクターとは別に簡単な花の絵も描かれているのですが、これはすでに死亡したメンバーであるウヴォーギン、パクノダ、シャルナークに向けての花なのでしょう。
幻影旅団というと、作者である冨樫義博さんが「全員死ぬ」と予告されているので、これからこの花はもっと増えていくのでしょうね…。

さて、36巻はまだ暗黒大陸に着かずに船での頭脳戦になるわけですが、ハッキリ言って自分の頭ではこの辺りのお話についていけません…。
ゴンがキルアやクラピカ、レオリオと出会って仲間になるハンター試験編はワクワクドキドキの連続だったし、ゴンとキルアの友情が熱いグリードアイランド編では新しいシステムに興奮し、本当に感動しました。
それから残酷なキメラ・アント編へと入り、最初はその恐ろしさから作品から離れたことも…。
けれど、改めてちゃんと読んでみると、なんて素晴らしく、心の琴線に触れる内容なんだ!
とその物語の秀逸さに驚愕して心から泣きました。

しかしこの暗黒大陸編に入ってからは、正直残念でした。

長らく登場しなかったクラピカが物語に出てきたのは素直に嬉しかったのですが、元から頭を使う内容が苦手なこともあり、ふきだしの文字量も出てくる人物も多く、理解ができない。「HUNTER×HUNTER」では元々心理戦や頭脳戦が多かったことは否めませんが、まだそれでも楽しめたんです。
そこには感情移入ができるキャラクターたちの熱い思いがありましたから。
けれど肝心の主人公も出てこないし、物語の中は終始殺伐としていて…。
まるでクラピカが主人公の違う漫画を読んでいるみたいでした。

もちろん殺伐や残酷さも漫画には大切なスパイスです。
それに時とともに作品が変化するのも当たり前のこと。
しかし、心から素直に楽しむことができたあの頃の「HUNTER×HUNTER」はもう無いんだな…と思うと一読者として悲しくて仕方ないのです。

今回は幻影旅団も多く登場していましたが、その中でも特にヒソカの存在が本当にわからない。
最初は狂人役として主人公であるゴンを惑わしたりしていましたが、グリードアイランドではまさかの協力枠となり、そうかと思えばキルアの執事を手にかけたり…。
ヒソカは団長含めすべてのメンバーを殺そうと計画しているのでしょうが、作者の狂気が具現化したようなだけの存在な気がして、物語を難解にしている気がしてならない…。
やはり自分は正義の主人公(この作品ではゴンやクラピカ)が悪(幻影旅団)を倒す図がどうしても見たいようです。

他にも第一王子や第二王子が登場し、お互いに潰し合いをしていますが、正直見たいのはそういうところではなくて。
新たなキャラクターを登場させて風呂敷を広げすぎてしまったのが残念で仕方ありません。
私が求めていたのは、いつもの主要なメンバーであるゴンとキルア、そしてクラピカやレオリオのお話なのです。

最初にこの作品で「念能力」というものに出会ったときは、かなりの衝撃を受けました。
それからゴンやキルアが一生懸命に「念」を使いこなそうと奮闘するシーンはとてつもなくワクワクしたものです(その後のキメラ・アント編では「虫も念使うの!?」とある意味驚愕しましたが)。
私が見たいのは、やはり主人公たちを中心にしたバトルですから、船の中であれこれと画策する王子たちが念能力を使ってもときめかないし、また覚えることが増えた…と煩わしくさえ感じてしまうのです。
主人公が頑張って自分のものにした能力をそこら辺のキャラクターが簡単に使えると興ざめしてしまうし、価値が下がってしまう気がします。
大事な設定だからこそ、ここぞという時に使ってほしかった。

暗黒大陸と初めて聞いた時は、その新しい未知のステージにワクワクしましたが、蓋を開けてみると難しい話の連続で、暗黒大陸編は未だ始まったばかりだというのにもうすでにお腹がいっぱいです。
これが序章に過ぎなくて、これからどんどん面白くなる展開だとしても休載続きの作者にはもう無理なのではないかと。
素晴らしい作品であり、続いてほしい気持ちもわかります。
けれども、読者の興味のない部分を長く続けてしまった感が否めません。

作者の頭が回りすぎるために「HUNTER×HUNTER」はもはや「少年漫画」の枠を超えてしまった感があり、早計かもしれませんが、純粋なワクワクドキドキを今の「HUNTER×HUNTER」に求めるのは見当違いな気がしました。

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