「銀魂」とは
「銀魂」とは、2004年から2018年まで週刊少年ジャンプで連載されていた作品です。
2年後の2006年にアニメ化され、2010年にアニメ映画化、2017年に実写映画化されました。
本編は宇宙からやって来た天人(あまんと)が実権を握り、侍が衰退の一途を辿っていた江戸時代末期がモデルになっていて、主人公の坂田銀時が「万事屋」として志村新八や神楽と一緒に何でも屋として働く、というギャグパートから人間味溢れるシリアスパートまで多彩な話を描いている作品です。
そんな「銀魂」について何が良かったのか、何が悪かったのか考えていきます。
「銀魂」の総評
ここからは77巻まで続いた「銀魂」について総評を行っていきます。
「銀魂」の良かった点
「銀魂」の良かった点は以下の通りです。
・魅力的なキャラクター
・他の作品にはないギャグセンス
・パロディの確立
魅力的なキャラクター
主要キャラである坂田銀時、志村新八、神楽や新選組の近藤勲、土方十四郎、沖田総悟からサブキャラまで魅力的なキャラクターが多く描かれています。
主要キャラについては、全員の過去についての長編があり、1人1人を掘り下げることでよりそのキャラの魅力を知ることが出来ます。
サブキャラに関しては、1,2回しか登場していないキャラに関しても印象的なキャラが多いです。
例えば、ジャスタウェイというキャラクターは本編に全く登場していないにもかかわらず、第1回人気投票で172票も獲得しています。

この他にも、作者空知英秋がゴリラとして出てくるキャラクターも人気があります。
各キャラにそれぞれ魅力があるのが特徴です。
他の作品にはないギャグセンス
「銀魂」のギャグは他の作品ではあまり見たことがないような独創的なものです。
人間の心理描写から普段から心の奥底に思っていることを表現する語彙力まで素晴らしいです。
ギャグ回だけではなく、シリアス回にもギャグを繰り出しており、緊張と緩和を上手く表現しています。
もう1つギャグで素晴らしいことは、下ネタです。
元々下ネタで面白いと感じる事は多いですが、「銀魂」の場合はその表現の仕方が多種多様です。
1つのフレーズを伝えるだけで、何パターンもの言い方を繰り広げています。
ただ問題点として少年誌ではギリギリなネタが登場する点です。
それについてはおそらく賛否が分かれるでしょう。
パロディの確立
本来、他の作品のキャラクターを登場させることはタブーだったのですが、「銀魂」はドラゴンボールやガンダムなどをパロディとして落とし込むことで面白さにより深みが出ています。
都市伝説では許可を取らずにパロディをしたので、担当編集が坊主になったり、先方へ謝ることになった説もあります。
そんな「銀魂」では、パロディをしても「銀魂」だからオッケーというような風潮にさえなっています。
最近公開された「銀魂」の映画では、公式にドラゴンボールのパロディをしていました。

この作画の製作には、ドラゴンボールのスタッフも参加しており、かなり話題になりました。
このように、「銀魂」はパロディをする、と割り切って考えてもらえる地位を確立しました。
「銀魂」の悪かった点
・ネタが伝わりづらい
・漫画では伝わりにくい場面がある
・歴史上の人物と間違いやすい
ネタが伝わりづらい
パロディネタや例えネタが少し古くて伝わりづらい場面があります。
例えば、聖闘士星矢やキン肉マンなど少し古い例えがあるので、若い層には難しいのではないのでしょうか。
特に1章が全てそのネタで埋め尽くされていたら飛ばしてしまいますね。
ただ、「銀魂」の場合だと、何をやっているか分からないけど面白い、というのもありそうですが…。
また、芸能人に例えたネタも登場します。
分かりやすい人物だと、小栗旬やタモリさん等は分かりやすいですが、橋爪功さんが登場した時は全く分かりませんでした。
世代間のギャップが大きいので、伝わらないのは悲しいですね。
漫画では伝わりにくい場面がある
「銀魂」は文字数が多く、ボケとツッコミが激しく飛び交っているので1つずつ追うのが難しいです。
特に、文字数が多くキャラが多いシーンでは誰が喋っているのか分かりづらいです。
アニメを見たら納得できる場面も多々ありました。
ただ、シリアスシーンでは文字数が少なく、描写もキレイなので、伝わりやすいです。
歴史上の人物と間違いやすい
「銀魂」は江戸時代を舞台にしており、歴史上の人物に似た名前のキャラクターが登場します。
あまりにも「銀魂」のキャラクターの印象が強いので本家と間違いやすくなります。
例えば「銀魂」の「真選組」は本来では「新選組」と表記します。
「銀魂」の「近藤勲」は本来では「近藤勇」、「銀魂」の「土方十四郎」は本来では「土方歳三」など似ているので間違いやすくなります。
裏を返せば「銀魂」で出てきたキャラクターだから覚えやすいかもしれませんが、どうなのでしょうか。
以前漫画内で、歴史のテストで間違って書いてしまう、紛らわしいなどの読者の苦情や、偉人を汚すなという歴史ファンからの苦情があるという記載があったので、当時から間違えられたのでしょう。
現実とフィクションの区別が必要です。
総評
「銀魂」という作品は独創性があり、他の作品とは一線を画す作品である反面、一部の層を置いてけぼりにしています。
ですが、本来は少年誌での連載でパロディを多用している点からすると30、40代男性をターゲットにしていたのかもしれません。
そこからアニメ化や実写映画化で女性ファンが増え、このようなズレが生じてしまったのでしょうか。
ただ、全く知らないパロディやネタが登場するということは、新しい世界を知れることと考えれば特に問題はないと考えられます。
普段とは違う漫画を楽しみたい、新しい世界を見てみたいという人には適した作品だと感じました。
「銀魂」の全体を通しての感想
「銀魂」全77巻を通して最初に思い浮かんだことは、この漫画を超える漫画が出てくるのだろうか、でした。
日常回のレベルの高いギャグ、シリアス回でのストーリーの綺麗さ、唯一無二の登場人物、これら全てを超えてくる漫画は今後現れないんじゃないかと思いました。
巻を重ねていくごとに、主要人物から枝分かれした人間関係が明確になっていき、最後には全ての根源に繋がっていくのは、1巻では考えられませんでした。
最初の頃で話題になったのは主人公の坂田銀時が、友情・努力・勝利をコンセプトにしている週刊少年ジャンプとは真逆な、無気力で死んだ魚の目をしていることです。
そんな無気力主人公が、最終巻では死に物狂いで戦っている姿が見れることは、この作品を見る上での1つの楽しみだと言えるでしょう。
あと、「銀魂」を読んで驚いたのは必殺技がないことです。
少年漫画では技を繰り出して敵を倒すというのがセオリーですが、「銀魂」は技なしで戦闘シーンを描いているのは素晴らしいと思いました。
心理描写や会話、武器を使った剣劇で格好いい戦闘シーンを演出していたことは今考えると恐ろしいです。
また、作者の考え方が非常に面白いです。
単行本で読者からの悩み相談を募集しており、そこでの返しがどの方面から悩みを見ているのだろうというように感心してしまうときがあります。
「銀魂」は作者の考え方が投影された作品なのかもしれません。
まとめ
「銀魂」は老若男女に愛される作品ではありませんが、実写映画化されてからファンが増え、明らかに人気に拍車がかかっています。
何回も読み返したくなる作品です。
作者の空知英秋氏の次回作も楽しみですね。