漫画「黒執事」30巻の批評と感想。

漫画「黒執事」のあらすじ

1877年のロンドン。飢えにあえぐ路地裏の子供たちは、お金持ちの女性が身に付ける耳飾りを盗んでは換金し、なんとか苦しい日々を生き抜いていました。

盗みの要となるのは毎回パチンコで耳飾りを撃ち落とす役の子供であり、周りからは「リン」と呼ばれています。ある日、いつものように子供たちがターゲットに盗みを働こうとすると、異様な空気の大人たちに捕まった挙句に殺されてしまいます。

驚異的に目が良かったためリンは唯一生かされ、大人たちの下で暗殺者として無理やり働かされることに。そうして暗殺が日常となり、「梟」という名で呼ばれるようになったリンにある日、ファントムハイヴ家の伯爵を殺せとの命令が下ります。

しかしこれに失敗してしまったリンは、ファントムハイヴ家の執事であるセバスチャンに捕まり、屋敷の中の伯爵の元に連れて行かれるのでした。瞬時に殺されることを覚悟したリンでしたが、リンの腕を認めたセバスチャンからファントムハイヴ家のメイドにならないかと誘われます。

そして、食べたことのない温かくておいしい食事を目の前に出されたリンは感動し、屋敷のメイドになることを決意します。用意された新しい眼鏡やメイド服に身を包み、これまでの喋り方も変え、ファントムハイヴ家のドジで明るいメイド「メイリン」は生まれました。

漫画「黒執事」30巻の感想

この黒執事は連載開始から早くも14年が経ち、コミックスは遂に30巻という大台に乗りました。

ページを開いた瞬間、目に飛び込んできたのは見知らぬ少年であり、開始早々頭の中は「?」で埋め尽くされました。読む巻数を間違えたか?と自分の目を疑いましたが、正真正銘求めていた30巻でした。ならばここに来て新キャラか?と不審に思いつつも、気付いたことが。なるほど、どうやらこれは誰かの過去のシーンである、と。頭の中でこれまでの黒執事キャラを総動員してみましたが、どうしても当てはまるキャラが出てきません。

それもそのはず、この30巻の冒頭にはミステリー小説などでよく知られる、“叙述トリック”が使われていたのですから。叙述トリックとは、読み手の抱いた先入観などを利用して作者がミスリードを仕掛けることです。ある一部の決定的な描写を曖昧にぼかしたりすることでその叙述トリックは可能となるわけですね。今回のケースでは、それが「性別」に当たります。「少年」と思い込んでいた人物を一度白紙に戻して考え、「目が驚くほど良い」、「リン」という名、などのキーワードを頼りに記憶を辿ると浮かび上がる人物が一人だけ…。

そう、記念すべき第30巻で語られたのは、ファントムハイヴ家でメイドとして生活するメイリンその人についてでした。

作者にまんまと騙されたのは自分だけではないはず…。30巻という大台に到達しても未だ読者を飽きさせないスタイルなのには素直に感動しました。本作にはこういう読めない展開が度々登場するので、まったく飽きを感じずに端から端まで楽しむことができますね。

さて、冒頭から登場していた「梟」と呼ばれる人物は実は女性であり、それは黒執事の初期から登場していたまさかのメイリンでした。初めて語られるその壮絶な過去に驚きを隠せません…。黒執事ではだいたいのキャラが何かしら闇のようなものを抱えていますし、メイリンといえばファントムハイヴ家のメイドですからそりゃ普通なわけがないのです。しかし、屋敷ではいつも笑顔で明るく、良い意味でその場の空気をぶち壊すイメージが強かっただけにやはりショックでしたね…。その後の「少年」のような姿から読者の見慣れたメイリンへと生まれ変わるシーンは、とても気持ちが良く、爽快でした。作中に登場するメイド服などへのこだわりも大変素晴らしく、作者の腕には毎回ただただ感服しますね。

あんなに壮絶な環境に身を置いた後でも、生まれ変わって笑うことができるメイリンがとてもいとおしいです。今まで性別も隠し、自分を殺して生きてきたので、これからはシエルやセバスチャンたちの元で自分らしく笑って生きていってほしい…。もう“人殺し”から抜け出すことはできないけれど、せめてもの幸せを感じることができれば、と思ってしまいますね。このメイリンの過去が描かれた30巻を読んだ後に初めの1巻をまた読み返すと、最初と違った見方ができるでしょう。

1巻すべてがメイリンの過去についてでしたが、いつも通り絵は惚れ惚れするほど美麗であり、今回も黒執事のダークな世界観に思う存分浸れました!連載が開始され、あっという間にコミックス30巻まで来ましたが飽きることはなく、まだまだこのキャラクターたちが作り上げる世界を見ていたいです。しかしその一方でこれから先も少しずつ謎が解き明かされていくと思うと、楽しみでドキドキが止まりません。

そして今回も作者の巧みな伏線回収が素晴らしく、やはり目が離せない!とても続きが気になる展開で終わった30巻でした。

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