みなさんはチョコレートと言ったら、どんな映画を思い浮かべますか?
「人生はチョコレートの箱のようなもの」というフレーズで有名な『フォレストガンプ/一期一会』でしょうか?
それとも、ファンタジー要素もあるヒューマンドラマの『ショコラ』ですか?
チョコレートが登場してくる映画はたくさんあるけれど、その中でも独特な存在感を放っている作品は、今回紹介する映画『チャーリーとチョコレート工場』ではないでしょうか。
2005年に公開されたファンタジー・コメディ映画、『チャーリーとチョコレート工場』。
本作は、監督のティム・バートンがロアルド・ダールの児童文学『チョコレート工場の秘密』を原作に映画化したものとなっています。
また、この児童文学の映画化は本作で2回目であり、1971年にも『夢のチョコレート工場』のタイトルで映画化されています。
ここでは、そんな映画『チャーリーとチョコレート工場』について、著者の感想や批評などを書いていきたいと思います。
その前に、映画『チャーリーとチョコレート工場』のストーリーを簡単に見ていきましょう。
貧しい家庭ながらも、心優しい両親と祖父母たちに囲まれて仲睦まじく暮らす少年チャーリー・バケット。
バケット家の近所には、謎に包まれているチョコレート工場がありました。
チョコレートは世界中に出荷されているにも関わらず、その工場には人の気配が全くないのでした。
そんな不思議なチョコレート工場を経営しているのが、天才チョコレート職人のウィリー・ウォンカです。
ある日、ウォンカは世界中に売り出しているチョコレートのうちの五つに金のチケットを入れたことを伝え、そのチケットを手に入れた人を工場に招待し、さらにその中の一人だけに特別な賞を与えることを発表します。
ついに、世界中での金のチケットの争奪戦を勝ち抜いた五人の子供たちとその保護者が工場の前に集まります。
その中には幸運にもチケットを獲得したチャーリーもいます。
そして、いよいよチョコレート工場内の不思議なツアーが始まり、チャーリーとの出会いにより、ウォンカの心にも変化が生じていくのでした。
この作品の感想を一言で言うと、「最高!」です。
それでは、具体的に著者目線の注目ポイントを中心に話していきたいと思います。
映画『チャーリーとチョコレート工場』の魅力と言ったら、何と言っても他に類を見ないユニークな世界観ではないでしょうか。
ミステリアスな雰囲気の音楽とともに始まるオープニング。
ベルトコンベアーに並ぶチョコレートを前に、その中から五つのチョコレートにウォンカが金のチケットを置きます。
このオープニングでチョコレートが製造され出荷されるまでが描かれているんですが、たったそれだけで観客を映画の世界に引き込んでしまうのです。
そして、物語が進んでチョコレート工場内に入ってからも、不思議な世界を見せてくれます。
ぜひ、そんな本作を見るときに注目して頂きたいシーンがあるんです!
それは、工場ツアーの最初、工場内部に入ったところです。
そこには全部お菓子で作られた庭園があるのですが、なんと、芝生や庭園のモニュメントは全てパティシエによって作られた本物のお菓子なのです(唯一お菓子で作られていない川はチョコレートに見える素材を使って再現されています)。
また、工場ツアー中盤に、たくさんのリスがクルミを割っているシーンがあるのですが、これはCGじゃなくて実際のリスを調教して実現させたと言うのでびっくりです。
本作の不思議な世界観の担い手と言えば(原作者ダールはもちろんですが)、監督のティム・バートンでしょう。
アメリカ出身の映画監督であるティム・バートンですが、実はウォルト・ディズニー・スタジオでアニメーション実習生をしていた事もある元アニメーターでもあります。
そんなティム・バートンの作風といえば、ダークな世界観やポップな色彩、ブラック・ユーモアでしょう。
例えば、製作で関わった1993年の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や1996年の『ジャイアント・ピーチ』にはバートン流のダークな世界が広がっています。
本作では、工場内のカラフルな色彩にバートン監督のセンスが余すことなく発揮されています。
バートン監督はウンパルンパのミュージカルシーンにも工夫を凝らしています。
特に、マイク・ティービーの時は『2001年宇宙の旅』や『サタデー・ナイト・フィーバー』などの名作映画やビートルズなどの有名ロックバンドを模倣した作りになっていてかなり面白味があるんですが、このシーンは大人の心をくすぐると思います。
また、ジョニー・デップはバートン作品の常連で本作以外にも、『シザーハンズ』、『アリス・イン・ワンダーランド』ほか9作で起用されています(2021年現在)。
そして、デップに次いで多いのは本作ではチャーリーの母親を演じているヘレナ・ボナム=カーターで7作となっています。
小話ですが、ヘレナとバートン監督は2014年までのあいだ恋愛関係にあり、子供も二人います。
さて、少しキャストの話をしましたが、もう少し詳しくキャスト勢について話していきたいと思います。
ウィリー・ウォンカを演じたジョニー・デップはたくさんの有名な作品に出演しているので、洋画を観る人なら知らない人はいないのではないでしょうか。
個性的な役柄を演じるなら右に出るものはいないほど、ジョニー・デップは多くのユニークなキャラクターを見事に演じきっています。
そんなデップが本作では子供っぽい心を持ちながらも幼い頃のトラウマを抱えているウィリー・ウォンカという人物になりきっています。
チャーリーを演じるのはフレディ・ハイモア。
彼とジョニー・デップは2004年の映画『ネバーランド』で共演しており、デップの推薦で本作のチャーリー役に起用されたとのことです。
子役時代のハイモアの素朴さはチャーリーと共通する部分ではないでしょうか。
また、チャーリーのおばあちゃんを演じるアイリーン・エッセルも『ネバーランド』に出演していて、ジョニー・デップとフレディ・ハイモアとは本作で再共演となっています。
本作オリジナルのキャラクターであるウィルバー・ウォンカを演じたのはイギリス出身の名優クリストファー・リー。
なんとリーは世界で最も多くの映画に出演した俳優としてギネスブックに載るほど活躍した俳優なのです。
そして彼もジョニー・デップと同じくバートン作品の常連で、6作ものバートン作品に出演しています。ドラキュラ伯爵役など威厳のある役を多く熱演したリーは本作でも父親としての威容を表現しきっています。
一方、本作で一番個性的なキャラクターといえば、ウンパ・ルンパでしょう。
演じるのはケニア出身の俳優、そしてスタントマンでもあるディープ・ロイで、ロイは165人のウンパ・ルンパすべての役を演じています。
最後に、ストーリーについて原作と比べながら見ていきましょう。
本作ですが、最初に話したようにロアルド・ダールの原作の二度目の映画化作品となっています。
本作は概ね原作に沿ったストーリーとなっていますが、終盤のストーリー展開が原作とも1971年版とも違ったオリジナルのものになっています。
具体的に見ていくと、ウォンカの幼少期のエピソードが追加されていて、さらにウォンカの父親も登場します。
バートン監督はこうしたアレンジをすることで「家族」というテーマを強調しているのだと思います。
不意に幼少期の記憶がフラッシュバックしたり、「ご両親」という言葉が言えなかったりするほど親に対するトラウマを抱えているウィリー・ウォンカが父親と再会し、仲直りする話は心がジーンとします。
単なるファンタジー作品ではなくて、子供も大人も楽しめる「家族」の物語でもある映画『チャーリーとチョコレート工場』。
そして、「家族」の物語を創り出す家族のように心の通った製作陣。
ティム・バートンの作品を見ていると、ファミリーで作っているのだなと感じるのです。
誰かと誰かが知り合って繋がって、また新たな作品を創り出す。
深く知っている仲間たちだからこそ、余すことなく才能を発揮でき、より素晴らしい作品が誕生しているのだと著者は思うのです。
初めて『チャーリーとチョコレート工場』を鑑賞する方はもちろん、再度鑑賞する方も、この記事を読んだ後にはまた違った発見があるかもしれません。
2023年にはチャーリーとチョコレート工場のウィリー・ウォンカの若き日を描く前日譚が全米公開される予定とのことなので、それも楽しみですね。