『チェンソーマン』は藤本タツキ先生による漫画作品。
第一部が「週刊少年ジャンプ」にて連載されていた。
第二部は「少年ジャンプ+」で2022年から連載がスタートしている。
2023年1月の段階でコミックス計13巻の累計部数は2300万部を突破。
2022年にはアニメ化もされ、アニメーション制作は、「呪術廻戦」などを手掛けた「MAPPA」、オープニングに米津玄師さん、エンディング曲は週替わりなどが話題となった。
内容は、チェンソーの悪魔に変身して戦う主人公デンシの活躍を描いたものだが、デンシは「ダークヒーロー」として描かれている。
ストーリー展開も退廃的で、大勢の人がバタバタと死んでいくなど、非常にダークなものだ。
今回紹介する13巻は第二部では2巻目にあたる。
第二部の主人公アサとデンジの会話シーンや、アサとユウコとの友情の結末など、読み応えのある巻となっている。
デンジの思考回路
13巻でのデンジの最初の登場シーンは、女子生徒の椅子になっている衝撃的なシーンだ。
主人公が女子の椅子になっているというシュールな光景はなかなかお目にかかれない。
また、その表情が、嬉しそうににやけているなら話は早いのだが、そうではない。
得体のしれない表情をしていて不気味なのだ。
これだけでデンジの異様さが際立っている。
そこに拍車をかけているのが、「チェンソーマン」であるとバレたいという欲望である。
12巻の終わりでデンジは正体がバレたらすごいモテるからという理由で、「チェンソーマン」として戦っていると発言している。
現に、人々がチェンソーマンへのコールをしている様子を満足げに眺めている。
悪魔化したユウコとの戦いでも、「チェンソーマン」の心を読んだユウコが「正体が自然な感じでバレることしか考えていない」と驚いているように、彼にとってはそれが何よりも大事なのだ。
傍から見たら異様な行動も、彼にとっては当たり前の行動であるということが恐ろしい。
人間なにかしらの欲望は抱えているものだが、ここまで欲に忠実だと読者の想像を遥かに上回ること平気でやってのけるだろう。
デンジの異様な行動にこれからも驚かされるであろうことが容易に想像できる。
アサとデンジ
初めて二部の主人公の「アサ」と第一部の主人公「デンジ」が会話するシーン。
デンジの監視役である吉田は、彼女が欲しくて「チェンソーマン」だとバレようとするデンジがこれ以上危ない行動を取らないように、彼氏を欲しがっていたアサを紹介する。
そうしてアサとデンジ、吉田の3人は屋上で一緒に昼食を食べることに。
12巻を読んだ時点で、2人の会話シーンが早く見たい!
と思っていたので早めに実現して嬉しかった。
チェンソーマンに対して素直になれないアサは「チェンソーマン」の悪口を言ってしまう。
それに反論するチェンソーマン本人であるデンジとは当然、会話のドッジボール状態になる。
この言い争いだが、本人たちが真剣なため、読んでいるこちらはそれが笑えてくる。
特に、デンジの表情に注目だ。
時間がたつにつれて、デンジの表情が必死になっていき、なおかつアップになっていくのが面白いのだ。
面白いだけではなく、第一部でマキマを食肉にして食べたことについてもさらっとふれている。
ここは正直笑えなかったが、改めて、『チェンソーマン』は日常に、さらっとの非日常を入れ込んでくる演出が巧みだと思う。
その後、アサに「チェンソーマン」の悪口を散々言われたデンジはしびれを切らし、自分がチェンソーマンだと正体を明かすが、もちろんアサには相手にされず、呆れられて屋上から出ていってしまう。
デンジらしい短絡的な行動に読者も呆れてしまうだろう。
第一部からこの物語を読んできた読者はそういえばデンジってこういう奴だよなあと思い出すのだ。
アサとユウコ
コウモリの悪魔に襲われたときに、足を怪我したユウコを見舞いに行くアサ。
何を話せばよいのかわからない2人だったが、ユウコが秘密を共有すれば親友になれると本で読んだからやってみようと提案をする。
アサは小学校の頃に授業中おもらしをした話を打ち明け、ユウコの番に。
2人の友情が深まる良いエピソードかなと思い、ほほえましく見守っていると、ユウコが切り出したのは昨日人を殺したというとんでもない内容だった。
最初は冗談かと思ったが、どうやら本当のことのようだ。
読者のショックを隠し切れない感情とシンクロするように、アサの表情がなくなっていく。
特に目に注目したい。
瞳にだんだんと光がなくなっていくのだ。
そして、次のページの見開きのコマでのアサの暗い、疲れ切ったような表情が目に飛び込んで来る。
こちらまで、気が重くなり、これ以上ユウコの話を聞きたくないと思うほどだ。
日もすっかり暮れてしまった。
これから暗く、重たい未来が待ち受けていることを表しているのだろうか?
『チェンソーマン』の特徴として、表情の細やかな変化が描かれていることが挙げられる。
一見、無表情に見えても、微細な感情がそこにはあるのだ。
ユウコの話を聞き、アサが絶望していく様子が何度読んでも痛々しい。
もうひとりのチェンソーマン
ユウコは学校で、アサをいじめていた女子生徒を亡き者にするために、悪魔の姿に変わる。
ユウコは正義の悪魔と契約し、悪魔の力を手にしたのだった。
しかし、ユウコを狩ることでデビルハンター部に入ることを目論むヨルと対決することに。
「チェンソーマン」の介入もあり、ボロボロになるユウコだが、なんとか逃げ出し、夜にアサの元を訪れる。
このシーンも見どころなので、ぜひ読んでほしい。
遠い親戚のデビルハンターに会いに行くために、ユウコは旅立つが、無残にも彼女は「チェンソーマン」らしき存在に首を切られてしまう。
犯人は影しか映っておらず、頭からチェンソーの生えた、明らかに「チェンソーマン」と思われる姿をしていた。
その時、デンジは寝ている描写が描かれていることから、犯人はデンジ、チェンソーマンではないようだ。
もう一人のチェンソーマンが登場しているという面白い展開になっている。
そして、アサが登校すると、デビルハンター部の部長であり、生徒会長でもある伊勢海ハルカが話しかけてきた。
「チェンソーマン」の話題になり、彼は自分の胸元のスターターを見せる。
自分こそが「チェンソーマン」だと伝えるハルカ。
彼はユウコを攻撃した「チェンソーマン」なのだろうか?
ここまで簡単に犯人をバラしていいものか?
読者の頭の中ははてなでいっぱいだろう。
個人的にはハルカではなく、真犯人がいそうな予感がしている。
今後謎が明らかになっていくのが楽しみだ。
まとめ
チェンソーマン13巻の批評と感想を紹介した。
ユウコは今後もアサの親友ポシションとして活躍してくれるレギュラーキャラなのかな?
と思っていただけに、今回の退場?には正直驚いた。
しかし、ユウコがアサに与えた影響は大きなもので、彼女は忘れることはないのだろう。
『チェンソーマン』はやはり容赦なく人が死ぬなあと改めて感じた。
第一部を読んできた身としては、これは序の口で、さらい地獄が待っているだろうなというのが容易に想像できる。
第一部のラスト、「マキマを食肉にして食べる」以上の衝撃が待ち受けているのかと思うと、今作からは目が離せない。
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