【ネタバレあり】漫画「チェンソーマン」12巻の批評と感想。

『チェンソーマン』は藤本タツキさんによる漫画作品で、第1部が「週刊少年ジャンプ」で2019年から連載されていた。
第2部は2022年から「少年ジャンプ+」にて連載中。
2022年9月の時点でコミックス11巻までの累計部数は1500万部を突破、アニメも始まり勢いに乗っている作品だ。

主人公「デンジ」がチェンソーを振り回す「チェンソーマン」となって大暴れする。
過激なバトルも見ごたえの1つだが、デンジの青春とも呼べる夢や恋の話が出てくるなど、静と動が入り混じった独特の仕上がりになっている。

第1部は「公安編」ということで、デビルハンターとしてのデンジの活躍が描かれる。
最初から最後まで衝撃的な展開が続いたが、特にマキマの最後は一生忘れないだろう。

アニメも放送が開始された。
前から注目はされていたが、オープニングが米津玄師さんということでさらに注目を浴び、さらにエンディングは週替わりで歌が変わるという斬新な試みだ。

本編も視聴したが、作画の綺麗さにまず驚いた。
キャラクターが滑らかに動くのだ。
アニメーション制作は「呪術廻戦」などを手掛ける「MAPPA」で、安心のクオリティー。
静かなシーンも激しいバトルシーンもどちらも見ごたえのある内容だ。

今回は『チェンソーマン』12巻の批評と感想を紹介する。
どうやらデンジではなく、新キャラの女の子がメインなようで、今までとは少し違うのかなとドキドキしたが、そんな心配は吹き飛ぶようなインパクトのある巻だった。

パロディーの秀逸さ

12巻ではパロディーがいくつか見られたので紹介したい。
まず、最初に目に飛び込んで来るのが、鶏の悪魔「コケピー」だ。
ビジュアルは蝶ネクタイをした、頭のない鶏と不気味なものだが、中身は純粋無垢で愛らしいものだ。
この「コケピー」という名前でピンと来たのが、同じく「ジャンプ+」 で連載されていたタイザン5さんの「タコピーの原罪」に登場する「タコピー」の存在だ。
語尾の付け方や優しい性格などそっくりだ。
意図的にパロディーしているものと考えられる。

他にも、戦争の悪魔の名前が「ヨル」という点も、同じく「ジャンプ+」 で連載されている遠藤達哉さんによる「SPY×FAMILY」のヒロイン、ヨルと名前が同じである。

そして、驚いたのが、正義の悪魔を倒すシーンだ。
倒したあとに爆発が起きるのだが、この爆発には見覚えがあった。
同じ作者である藤本タツキさんの「さよなら絵梨」のラストシーンだ。
画面の左端に人物、背後で爆発。
この構図がそのままなのだ。
まさかのセルフパロディーに思わず、にやりとしてしまった。
ちなみにアニメのオープニングでも爆発のシーンがあるので要チェックだ。

読者の予想を裏切る『チェンソーマン』

『チェンソーマン』はこちらの予想を良い意味で裏切ってくる。
今回もいたるところで驚くような展開が繰り広げられた。
まず、冒頭だ。
第2部ということで高校生になったデンジが出てくるんだろうなあと思い、ページをめくるといきなり頭のない鶏「コケピー」の登場だ。
これには拍子抜けしてしまった。
やはり『チェンソーマン』は普通の物語じゃない。

そして、「コケピー」はマスコットキャラ的な存在なのかなと思わせるような流れのあと、唐突に退場する。
主人公アサに押しつぶされて、死亡するというあっけない最後だ。
さきほどまであんなにキラキラと輝いていたキャラクターが唐突に死ぬとは誰も思わないだろう。

アサの友人ポジションの「委員長」がまさかの敵だったという展開にも度肝を抜かれた。
これからも友人ポジションとして長く活躍するのかと思わせての、急展開に最初は頭がついていかなかった。
そして、アサが委員長に無残に殺されるシーンもグロテスクに描かれる。
容赦がない残酷描写に衝撃を受けた。
まさかのメインキャラがこんなにも早く、むごたらしい死に方をするとは夢にも思わなかった。
そういえばデンジも悪魔たちにバラバラにされてしまったことを思い出す。
そう考えると『チェンソーマン』の世界ではこれは自然なことなのかもしれない。

戦争の悪魔の登場にも驚いたが、それ以上に驚いたのが、アサの担任の先生を武器にするという展開だ。
この「田中脊髄剣」は元ネタが「週刊少年ジャンプ」で連載されていた「ボボボーボ・ボーボボ」に登場した田中ソードだと思われる。
田中ソードは剣に人の頭がついていてコメディー寄りに描かれている。

残酷な描写が続き、残酷描写があまり得意ではない私は面食らってしまったが、それと同時に、読者の予想を裏切ってくるぶっ飛び具合に、『チェンソーマン』の感覚を思い出し始める。
物語終盤、お待ちかねの「チェンソーマン」の登場、ゴキブリの悪魔をぶった切る爽快感に「ああ、チェンソーマンが帰ってきたんだ」と感じるのだ。

セリフのないシーンにも注目

インパクトのあるセリフがあるシーンはもちろん印象に残るが、セリフがない細かなシーンにも注目したい。

アサとユウコが片方、靴を履いていない状態で街中を駆けるシーン。
途中からセリフが一つもない。
2人が片足だけ靴を履かずに外を歩く原因となったのは、アサへの陰湿なイジメが原因だ。
下駄箱に入っていたアサの靴は鶏肉まみれにされてしまったのだ。
靴のない状態で外を歩くアサを心配したユウコが自分の靴を片方アサに貸す。
そして、ユウコは走り出すのだ。

街中を片方の靴だけで走る二人。
先ほどまでの憂鬱な雰囲気をぶち壊すようなすがすがしい光景に私の心のもやもやがすっと晴れるのを感じた。
アサもきっと同じ気持ちだっただろう。

セリフがなくとも、2人の走る姿、靴を履いていないほうの足のアップなど、何気ない描写一つ一つがとても印象的だ。

他にも、放課後街に繰り出すシーン。
アサとユウコがお互い親を悪魔に殺されていることで話が盛り上がり、ユウコはトイレに行ってしまう。
そのあとのアサの顔に注目だ。
口元がにやけているのを隠そうとしているのだ。
一週目では気が付かなかったが、二週目でよく見てみると、口元が不器用にゆがんでいる。

『チェンソーマン』はこうした何気ないシーンでもキャラクターの表情をしっかりと入れてくるので読む度に発見がある。

デンジはやはりデンジだった

物語終盤、お待ちかねのデンジが登場する。
マキマとの壮絶な戦いを乗り越え、少しは成長したのかと思いきや、特に変わっていなかったのでなんだか一安心だ。
悪魔から、未来ある若者1人を助けるか老い先短い高齢者5人を助けるか選択を迫られ、まさかの猫を助けるなど、相変わらずやることがぶっとんでいる。

11巻の終盤「モテたい」と話していた通り、デンジの頭の中はそれでいっぱいなようだ。
チェンソーマンについての街頭インタビューに自ら答えたり、皆が「チェンソーマン」を賛美している様子を満足げに眺めていたりと、ぶれていない。

カフェで吉田と話しているときも、素手でケーキを食べるなど、下品で自分の欲望に忠実なところがデンジのどこか憎めない点なのだろう。

まとめ

12巻を読み終え、『チェンソーマン』はやはり面白いなという言葉が真っ先に浮かんだ。
読者を飽きさせない斬新な展開、巧みな心理描写。
そのどれもが、相乗効果となって読者を『チェンソーマン』の世界に誘ってくれるのだ。

正直、読み終えた後に、頭がクラクラしてしまった。
それくらいこの過激で魅力的な世界にどっぷりと浸かってしまい、しばらく現実に戻って来られなかったのだ。

アサとデンジが今後どのように関わっていくのか、今から楽しみで仕方がない。
アニメもパワーや岸辺を始めとした魅力的なキャラクターの登場が待ち遠しい。

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