映画「悪人」を観賞しました。
公開当初、私はあまり興味を持っていませんでした。
その理由は、妻夫木君が悪役を演じていたことです。
彼は本当に善人の顔をしていて、悪役には合わないように思えました。
以前の作品である「黄金を抱いて翔べ」では、どうしても悪役に見えず、「渇き。」では彼の演技にやる気が感じられましたが、おそらくより適した俳優がいたのではないかと思いました。
しかし、今回の作品では、彼の演技が非常に素晴らしかったです。
祐一というキャラクターは口下手で、自分の気持ちをうまく表現できない若者を演じています。
彼の顔立ちは悪くありませんが、イケてる感じは全くありません。
地方に住む青年の雰囲気を見事に表現していました。
この物語では、出演者の皆さんが本当に素晴らしいです。
深津絵里さんは相変わらず美しいですね。
すっぴんでも美しいです。
美人役でなくても美しさが際立ちます。
ただ、正直なところ、この作品の役柄としては少し美しすぎるかもしれません。
もう少し控えめな印象の方が、この「地方で特に出会いのないOL」の雰囲気が出たかもしれませんが、興行的な要因もあるでしょう。
美しさには客が集まるという側面もありますからね。
満島ひかりさんは、存在感がありますね。
本人は全くそのつもりはないのかもしれませんが、周囲からは独特の印象を与えるようです。
自分が可愛いことを自覚し、それにふさわしい態度を取る感じがあります。
自己評価と周囲の評価が一致していないように感じますが、それも彼女の個性でしょう。
岡田将生さんは、このような複雑な役柄がよく似合いますね。
本人がそういう印象を持たせるからかもしれません(私見です)。
江本明さんと樹木希林さんについては、言うことはありませんね。
演技が非常に素晴らしかったです。
娘を失った父親の心情や、こういったおばあちゃんが実際には多く存在することを感じさせてくれました。
宮崎美子さんについては、お母さん役では余貴美子さんと共に演技界の二大巨頭ですが、今作では祐一(妻夫木君)の母親として余貴美子さんが出演されていました。
余さんは育児放棄の母親役でしたが、どちらも素晴らしい演技でした。
松尾スズキさんは、胡散臭い役柄を上手く演じていますね。
彼の演技力には感心します。
役者陣は本当に素晴らしいです。
しかし、肝心のストーリーについては、私はあまり納得できませんでした。
原作を読んでいないため、原作に基づいている部分も理解しきれなかったかもしれませんが、映画単体としてはいくつか疑問点が残りました。
最初に、祐一(妻夫木聡)が佳乃(満島ひかり)を殺す場面について述べます。
確かに、佳乃の行動は極めて問題的ですし、祐一が怒りに駆られるのは理解できます。
ただし、彼が自分の手で彼女を殺す場面は、その後の物語において祐一のキャラクターに対する見方を変えてしまう可能性があります。
祐一が佳乃の首を絞める場面の代わりに、祐一が佳乃を制止しようとした結果、佳乃が誤ってガードレールを越えて転落死する「事故」が発生するアイデアはどうでしょうか。
祐一には殺意があったとしても、ガードレールを越える事故が発生したことで、最終的な原因は「事故」であるため、祐一に対する同情が残りやすくなるかもしれません。
次に、祐一と光代(深津絵里)の関係について考えてみましょう。
彼らがすぐに恋に落ちるシーンが、少し急すぎるように感じました。
特に最初のホテルの場面では、初対面であるにもかかわらず、急速に親密になりすぎると感じました。
光代もヤリ●ンというわけではないでしょうし、あのような状況での行動は驚きです。
その後、彼らが深い絆を築くスピードも早すぎると思いました。
光代が祐一に強引に誘われたことが彼女にとって嬉しかったり、非日常的な殺人犯というシチュエーションが彼らを引き寄せたのかもしれません。
しかし、それでも彼らの関係の発展が急速すぎるように感じました。
原作ではもう少し詳しく、ゆっくりと関係が描かれていたのかもしれません。
また、彼らが逃亡する間、家族や自分たちの過去のことを考えないのか、セックスだけに頭がいっぱいなのか疑問に感じました。
特にこの作品では被害者や加害者の肉親に関する描写が多いため、その点が不足しているように思えました。
佳男(江本明)の演技は非常に素晴らしかったですが、彼の復讐の対象が増尾(岡田将生)ではなく祐一であるべきだったのではないかと感じました。
犯人がまだ捕まっていない段階では、彼に対する憎しみを向けるしかなかったかもしれませんが、真相が明らかになった後でも、その方向に憎悪を向け続けることが適切なのか疑問です。
祐一との対面が描かれなかったため、お父さんの怒りや感情の行方が不明瞭なままに終わってしまったように思えます。
その点が未解決のまま残っているように感じました。
また、房江(樹木希林)の場面で松尾スズキの悪徳商法のエピソードが登場しましたが、これは物語の本筋とは関係が薄いように感じました。
多くの点で批判的な意見を述べましたが、最も大きな問題は「結局、殺してるじゃん」という要素でしょう。
この要素が存在すると、家庭環境や「愛」などの背景があっても、同情するのが難しくなります。
直接的に誰かを殺していない場合でも、その人の死に何らかの関与がある場合、逃げ場や救済の余地がないと、観客としては共感することが難しいです。
この問題がクリアされていれば、『悪人』と一括りにされても、事情が複雑であることを理解できます。
悪いのは犯人だけではなく、犯人以外も無実ではないという感覚で映画を見ることができたかもしれません。
このように、物語には多くの不満点がありましたが、役者陣の演技は本当に素晴らしかったです。
彼らの演技だけでも映画を楽しむことができました。
ただし、物語は灯台以降、停滞気味に進行する部分もありました。