【若干ネタバレ】漫画「20世紀少年」の批評と感想。

最初にお断りしておきますが、私の漫画の評価軸は、「総合的な評価」ではなく「ピーク時の興奮度」です。
そのため、後半がどれだけ混沌としていようと、結末が満足できないものであろうと、前半が一生忘れられないほど素晴らしく魅力的だった場合、その漫画は常にトップランクに位置し続けるのです。

あらすじ

1997年、幼少期には周囲の注目を浴びるリーダーとして、青年時代には成功を夢見て音楽活動に情熱を注いでいた遠藤ケンヂ。
しかし現在、夢は破れ、行方知れずの姉が残した赤ちゃんを抱えながら、故郷のコンビニで店長として働き、謙虚に接客に励む毎日を送っていました。
ある日、小学生時代の親友である”ドンキー”の訃報が届きます。
ドンキーの葬儀に参列し、幼少期の思い出にふけるケンヂ。
同じ頃、ケンヂのクライアントである「敷島教授」の家族が謎の失踪を遂げました。
ケンヂは空き瓶の回収のため敷島家を訪れ、そこで幼少期に見覚えのある『特定のシンボル』を目撃するのです——。

伏線と衝撃の連続

今日のレビューは、不穏なプロローグと唐突なあらすじから始まりますが、そのあらすじを読んでも一体どのような物語なのかが全く理解できません。
正直、私も同様でした。

通常、面白い漫画やヒット作は第1話ですでに魅力的なものであることが多いです。
最低でも1巻を読み終える頃には、「ああ、こういう内容なのだろう」という予想が立ちます。
しかし、「20世紀少年」は1巻を読み終えても、一体どのような物語なのかがまったく見えてこず、その不思議な魅力に惹かれて2巻まで読むことにしました。

2巻も終盤に差し掛かった頃、突然「ロンドン」という言葉が登場した瞬間、私は本作の本質を初めて理解したことに驚きました。
この「ロンドンの衝撃」を皮切りに、この漫画は伏線と驚きの展開で満ち溢れています。

「20世紀少年」はまさに「伏線漫画」の代表作であり、背筋がゾクゾクする瞬間が随所に散りばめられています。
幼少期に登場した人物や中盤で失踪した人物が後に登場し、謎めいていた出来事が明らかになるなど、驚きの連続です。

この作品を読むと、つい声を上げてしまうことでしょう。
「あのキャラクターがこんな形で登場するなんて!」
「これが謎の解明方法だったとは!」
「あの時の出来事がこう結びついていたのか!」
私も初読時、何度も驚きの声をあげたものです。

そのポイントこそが「20世紀少年」の真髄であり、この一点が魅力的なのです。
ただし、その一点においては、非常に優れていると言えます。
それは、「伏線が巧妙に張られ、それによる驚きの展開」です。

「20世紀少年」は、伏線と衝撃の連続で読者を魅了する作品です。
この要素を求める読者にとって、黙って作品を読ませたい一作です。

何とも言えないノスタルジックな感覚

次に挙げるこの漫画の魅力は、子供時代への郷愁とその胸に迫る感情です。

物語は1997年の現代と、彼らの幼少期である1970年代を行き来しながら進行します。
当時、未来への夢が満ち溢れ、大人になったら何になりたいかという夢が膨らんでいました。
しかしその夢を追いかけるうちに、現実は思い通りにはいかず、大人になった今、自問自答する瞬間が訪れます。
主人公の持つこの複雑な感情に、読者は深く共感し、心が揺さぶられることでしょう。

この漫画は同世代の人々にとって特に共感を呼び起こすでしょうが、1984年に生まれた高校生が2001年に読んでも、同じくその胸を締め付ける感情を抱くことでしょう。
幼少期の無邪気な自分と現在の自分との対比が、どの世代であろうと心に触れるものです。
自分の誕生日や年齢に関わらず、この幼少期の感情に対する複雑な感覚は共通するものがあるのでしょう。

得体のしれない恐怖

次に挙げる魅力は、この漫画が持つ独自の「恐怖感」です。

この作品は、ゾンビや幽霊が登場するわけではありません。
急に襲いかかる殺人鬼や、見開きページで現れる怪物のようなものでもありません。
それなのに、妙な恐怖が漂っています。
何となく不気味さが漂う要素が、非常に恐ろしい印象を与えます。

この漫画のラスボスは、新興宗教の教祖である「ともだち」ですが、彼の存在が非常に恐ろしいです。
一体「ともだち」は何者なのか?
その意図や目的は全く理解できません。
顔も名前もわからず、その考えや行動も読み取れません。
彼を取り巻く独特な雰囲気や狂信者たちの異常な行動も、不気味さを倍増させます。

この「わからないものの恐怖」を表現する能力において、浦沢直樹は確かに一流の作家です。
夏の暑い日々、ほんのりでも涼を求めるなら、ぜひこの作品を読んでみることをおすすめします。
そして最良の状態で楽しむためには、静かな夜、部屋で一人で、最低でも12巻までを堪能してみてください。

総括

総括すると、誰もが抱く子供時代の懐かしさと哀愁、そして未知の恐怖要素を不気味な雰囲気で織り交ぜ、巧妙に配置された伏線と驚くべき展開によって極限まで引き出された、魅力溢れる漫画作品と言えるでしょう。

最後まで読むかは任せます(笑)

この漫画は、第12巻から第13巻にかけての魅力は確実に保証いたします。
しかしながら、それ以降の展開、謎の解明や未解決のまま進行するかについては、お読みいただく方の判断にお任せいたします。
その結果については、私は一切責任を負いませんので、何とぞご理解ください(笑)